建売と注文住宅、どっちがいいの?<後編>

前編では、「注文建築」はどんな風に進めていくものなのか、知っておくべき注意点についてご説明をさせていただきましたが、今回の後編では、「建売」と「建築条件付き売地」の特徴についてお話します。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●建売の主なメリットは?

一口に「建売」といっても、耐震性・デザイン性・断熱性などなど、その建物の仕様は本当に「ピンからキリまで」様々です。

「建売」の主なメリットは次の3つです。

(1)新築の建物を割安に取得できる

最も代表的な「建売」の例としては、毎年全国で4万棟以上の新築を分譲している会社(テレビCMもやっています)などをはじめとする「パワービルダー」と言われる建売分譲会社です。

住宅を建築する際のキッチン、ユニットバス、トイレなどの設備機器や、サッシ、ドア、フローリングなどの部材を大量に仕入れてることで大幅なコストカットだけでなく、建築方法についてもシステム化されている為、同じ家を注文建築で1棟建てるよりも工期が短く、様々な要因により割安になるというメリットがあります。

※但し、大手不動産会社分譲のブランド建売については、建物のスペック以上のブランド料が上乗せされている為、むしろ周辺相場よりも割高の物件が多いことは念頭に置いておいてください。

(2)現物を見て購入できる

建物が完成している分譲地では、建物の中の陽当りや空間の広さ、部材のテイストなど、現物を見て購入する事ができる安心感があります。また、未完成の現場の場合、別の場所に同じ仕様で建てられた完成参考現場を見ることができる場合も多いです。

(3)手間がかからない

間取りや部材決めなど膨大な時間と労力を要する「設計」の作業も不要となります。支払いについても、「契約時に手付金」→「建物引渡時に残金を支払う」という2ステップだけなのでとてもシンプルです。住宅ローンの支払いは新居にお引越ししてからスタートなので、家賃などとの二重払いも発生しません。ほぼ売主に「おまかせ」の家に引っ越すだけという「楽さ」も大きな魅力です。

●建売で気を付けるべきポイントは?

前編でお話した「注文建築」と比較すると、住まいに求める「自由度」については制限されますが、物件購入を決めるプロセスもシンプルで、住むイメージを思い浮かべる難易度も低いというところは、ひとつの安心感となって、住まいのニーズが多様化した現代でも「建売」はよく売れています。

とはいえ、建物については冒頭でお話した「ピンからキリまで」をどのように考えるか?という点は購入される方によってそれぞれ価値観も違うと思います。

主にどんなポイントに気を付けておけば良いかは以下の3つとなります。

(1)「仕様書」を確認しよう

新築の建売住宅には、完成している物件であっても「仕様書」というものが必ずあります。この仕様書には屋根材の品番やキッチン、ユニットバス、フローリング、ドアなども、それぞれどういう商品が設置されているのかわかるリストのようになっています。特に「断熱材になにが使われているのか?」というのは、光熱費に大きな影響を与えるので素材を確認しておくと良いでしょう。

(2)オプションに注意

テレビアンテナ、カーテンレール、屋外の水栓、屋外のコンセントなどは基本仕様に含まれていない建売が多いです。また、「パワービルダー」の建売では「網戸」や「クローゼットのパイプ」などもオプション扱いになっているので注意が必要です。

(3)ホームインスペクション(住宅診断)の利用をおすすめします

ホームインスペクションとは、第三者の資格ある一級建築士などがホームインスペクターとして、建物の不具合が無いかを検査してくれるサービスの事です。建売は完成している状態だと、工事で手抜きやミスが無いかを確認することが難しいというところが不安という方も多いです。

実際、私が仲介した新築戸建でも、引っ越し後に不具合がみつかるという事もしばしばあります。施工会社に故意の手抜きが無くても、単純なミスで建物に悪影響を与えて数年間発見されなかったという例もあり、その時に補償されない被害については購入された方が費用を負担して修理しなければなりません。

ホームインスペクションは数万円~20万円前後かかりますが、せっかくの新築ですから、建売に限らず、注文建築でも第三者の専門家にチェックをしてもらう事で、長く安心してお住まい頂く事ができると思います。

●建築条件付き売地とは?

最後に、建売と注文建築の中間的な存在として「建築条件付き売地」というものがあります。今回のコラムではおおまかなご説明にとどめますが、我々の業界では「建築条件付き売地」=「トラブルが多い」というイメージが強いです。

建築条件付き売地とは簡単に言うと、その土地を購入したら建物を建てる建築会社が指定されていて、他の会社で建築することは出来ないというものです。

契約書上は土地の契約後3ヵ月以内に指定された建築会社と、建築請負契約を締結する事が条件となっており、もしも土地購入後に建築会社と請負契約を締結できなければ土地も含めて白紙解約になるというものです。よく言えば、セミオーダーの注文建築とも言えますが、一口に建築条件付き売地といっても、間取りすら変えられない物件から、建築会社だけが指定されていて、実質は注文建築同様の自由度がある物件まで、取り決めは売主業者によって様々なので、購入された方の期待と売主の意図にズレがあってトラブルになるケースが多く、契約前にしっかりと確認する必要があります。

選べる部材等がかなり制限されている物件であれば建売同様に「仕様書」というものがあるので、どんな建物部材を使用できるのかしっかり確認したり、代金の支払い方法やタイミングについても売主業者によってかなりバラツキがあるので、注文建築同様の手順と確認が必要であることも念頭においておきましょう。


「建売」と「注文建築」どちらが良いのか?をまとめますと

・コスト、時間、労力をなるべくかけたくない方 → 【建売がお薦め】

・自身の住まいに対する夢の実現、自由度、満足度を追求したい方 → 【注文建築がお薦め】


※「建築条件付き売地」は、建売に近いくらい自由度が少なく、注文建築に近い大変さが伴うというくらいの認識でいないと、トラブルに発展する可能性が高い。

※「建売」「注文建築」いずれの場合にも費用は掛かるが「ホームインスペクション」を入れた方が良い。

ホームインスペクションは、建物完成時にのみチェックしてくれるものや、建築過程からチェックしてくれるものまでサービス内容により数万円~20万円前後かかりますが、意外にも多い施工ミスをプロが指摘してくれるのでその価値ありです。


今回は、以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

ご自身が行きついた物件の種類がたまたま「建売・注文建築・建築条件付き売地」だった、という場合もあるかもしれませんが、入り口でこういったそれぞれの特徴をよく理解しておけば、「こんなはずじゃなかった・・・」という結果にはならないと思いますので、是非ご参考になさってください。


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