2021年11月現在の不動産市況は?

「住まいのセミナー」でもお話していますが、マイホームの「買い時」「売り時」は皆さん個々人の背景やライフプランによってバラバラで、結果的に「その方にとって必要な時」に動かれたという方がほとんどです。

そして、そのタイミングは予期せず訪れたという方も実際には多いので「いつかはマイホーム」とお考えの方には中長期的な市場観測をお勧めしています。

そこで今回は四半期に一度、公益財団法人 東日本不動産流通機構からリリースされている首都圏のサマリーレポート(中古マンション・中古戸建)を取り上げて、これまでの大まかな流れを振り返りつつ、2021年10月発表の最新サマリーレポートから読み取れる現在の市況を解説していきます。

※ご興味ある方は時々こちらをチェックしてみてください→http://www.reins.or.jp/library/2021.html

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●2020年からの振り返り

まず現在の市況を把握するためには、ここに至るまでの流れを昨年初頭くらいまで遡る必要があります。

【2020年1月~3月】

この時期の市場は「停滞」していました。前年から続く相場価格の高止まり感と、オリンピック後の値下がり期待による「買い控え」が続いた影響で、市場に出回っている物件の多くはなかなか売れず、ジワリジワリと値下がりの動きを見せ始めていました。

【2020年4月~6月】

追い打ちをかけるように春先のコロナショックの影響によって4月、5月はこれまでに無い市場の停滞が起き、取引数が激減しました。ところが6月には早々に急反発してこれまで滞留していた物件が堰を切ったように売れ始めました。

【2020年7月~12月】

6月からの流れのまま引き続き売れ行きが好調だった半面、新規物件のリリース数が減りはじめ、一方で価格がさらに上がり始め、年末ごろには相場価格の高騰が顕著になっていきました。

【2021年1月~3月】

この時期はとうとう新規物件のリリース数は前年比で20%以上減少する事態となります。この影響もあり市場に売り出されている物件は割高でも売れる状態が顕著になり、相場価格をより一層押し上げることになりました。

【2021年4月~6月】

新規物件のリリース数は低いレベルで横ばい又は減少となった一方で購入層が減ることはなく、競争が激化して、価格は更に上昇を続け、これに拍車をかける要因として輸入木材が激減する「ウッドショック」という新たな問題が発生。新築する木造住宅の価格が更に上昇してしまう事となりました。

【2021年7月~9月】

そして現在の市況に至る訳ですが、オリンピック、パラリンピック開催等は、不動産市場にはまったく影響がなく、新規物件リリースは低水準を維持したまま、更に価格上昇が続いたという結果になりました。

※出典 公益財団法人 東日本不動産流通機構 季報マーケットウォッチサマリーレポート2021年7-9月期

●現在の不動産市況

春先の「ウッドショック」については、木材の供給自体はある程度の落ち着きを取り戻してきたものの、依然として安定せず価格もさほど下がっていない状態が続いています。木材に限らず、昨今の世界的なインフレ基調、資材不足の影響も出始めており、直近ではトイレなどの水回り機器や給湯器が入荷されない為に完成時期が遅れている現場なども出始めています。

今後もこういった資材関係の影響が出る可能性もあり、今の時期に購入しなければならない方はより一層、スケジュールにも余裕をもって物件を探す必要があると思います。


昨年から続いている新規物件が少ない状況の要因として、コロナ禍の先行き不安や相場価格の高騰による「買い替え層の減少」があげられる訳ですが、実質の年収が上がっている訳ではない状況下で、例えば

「4,000万円で購入した家が今なら5,000万円で売れるが、今より条件の良い物件は6,000万円もする」

というような方がとても多く、テレワーク化によって地方移住されるような方の数も限定的で、「より良い条件の家に買い替えたいニーズはあるものの、今はなかなか積極的になれない」という状況はなかなか変わらないのではないかと思われます。

 

長く続いた緊急事態宣言の解除によって、例外的に都心部など一部の地域でこの傾向が好転する可能性があるのかどうかについては今後のコロナ禍の状況も含めてもう少し様子を見る必要がありそうです。それから住宅ローン金利についてはまだ史上最低水準を維持していますが、アメリカの金利上昇の影響が日本にも及んでくる可能性については注視していく必要がありそうです。

いずれにしても今後の景気対策の効果や経済的なショックが起きる可能性なども加味すると様々な要因が絡んでいて、今後の市況を見通すことはなかなか難しい状況が続いています。

●今家を買いたい人はどうすればいい?

ここまで、ざっと現在の市況とそこに至るまでの経緯を振り返ってみましたが如何でしたでしょうか?

今の状況だけが特別という訳ではなく、いつの時代にもこういった外的要因は必ずあります。

最初のお話に戻ってしまいますが、現実的に今この市況でもマイホームを購入した方のお話を聞くと、やはり「相場価格が高いことは理解しているが、住まいの必要に迫られて購入した」という方がほとんどです。

これも住まいのセミナーでお話しましたが、中長期的に見ると人口が減少して、空き家は増えていくので、全体的には不動産の価値は下がっていく傾向ですが、そうはいっても価格がなかなか下がらないエリア、大幅に下がるエリアの二極化は顕著になっていくと思われます。

「これからマイホームを」とお考えの方、「いつかは売却を」とお考えの方は、将来後悔しないためにも購入する物件のエリアがそのどちらに属しているのかを、ご自身の状況や今後のライフプランになぞらえて慎重に見極めていく必要があると思います。


ライフプランサポート協会では、将来にわたるライフプラン設計などをファイナンシャルプランナーに相談できる個別相談と、利害関係の無い第三者のプロに住まいについての相談ができる個別相談、セカンドオピニオンサービスを実施して、皆様をバックアップさせて頂いております。 

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