建売と注文住宅、どっちがいいの?<前編>

新築戸建を探されているお客様で時々話題にあがるのが、建売と注文住宅の比較です。

このテーマについては、前編と後編に分けて、建売と注文住宅の違い、メリットやデメリットなどをお伝えしていければと思います。

今回の前編では、まず「注文建築」はどんな風に進めていくものなのか、知っておくべき注意点をご紹介させて頂き、住まい選びの一つの材料にして頂けたらと思います。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●あなたは注文住宅派?それとも建売派?

長く住む家だから、自分のこだわりを盛り込んで注文建築したいという想いは、多くの方が抱かれていると思います。

地域などによって好まれる傾向は違うと思いますが、私が営業している都内では以下のようなお話が多いです。

【注文住宅派】

〇せっかく購入するなら注文建築で自分好みの家を建てたい(建売だと個性に欠ける)

〇注文住宅だと工事の過程を見ることができるので安心(建売だと手抜き工事が心配)

〇建売に限定すると良い場所が選べない(場所を重視)

【建売派】

〇家の中を見られるので生活のイメージがしやすく、すぐに引っ越しができる建売が良い(判断と転居が楽)

〇注文住宅だと建売よりも割高になってしまいそう(予算が不確定なので不安)

〇注文住宅は打ち合わせなどで多大な時間と労力がかかるので建売が良い(負担が大きく面倒)

 

上記の例でいえば注文住宅を希望されていた方でも建売を購入されることもありますし、その逆もあります。結論としては、それぞれのメリット・デメリットを考えた時、最終的にはご自分の中で重視される項目で「建物へのこだわり」がどれくらい強いのか?で結果も変わってきます。

すなわち「建物へのこだわり」はどこまでいっても個人差があり、家を探されている背景など、他の要素を加味して総合的に判断した時に「建物へのこだわり」と「その他の要素」のどちらが自分にとって大事なのか?という自問自答の末に答えを出していくのです。

今回は、注文建築の流れと知っておくべきことをお伝えしますので、ご自身にとってどちらが合っているのか?という判断の材料にしていただければ幸いです。

●「注文建築」の実際の流れと知っておくべきこと

「注文建築で理想の住まいを建てたい」という場合、建売のように、実際に完成している家や、間取り・仕様・価格が決まっている家を購入するのとは違って、様々な行程不確定要素があります。注文建築は「どんな感じに進めていくのか」ということと、それぞれのプロセスにおける「注意点」を一般的なケースをもとにまとめてみました。

 

(1)土地探し・建築会社探し

まずは土地探しですが、両方並行して探される方、土地が決まってから建築会社を探される方などいろいろなケースがあります。

(2)候補の土地をもとに間取りプラン作成

候補の土地が見つかったら、その土地にどんな建物が建てられるかを、候補の建築会社又は、仲介会社から紹介された仮の建築会社に相談のうえ、簡易的な間取図を作成してもらいます。

(3)間取プランの概算見積り

上記の(2)で作成した間取りプランで建築した際の概算見積りを候補又は仮の建築会社に作成してもらいます。

(4)土地代+概算見積り+諸経費をもとに購入にかかる資金計算・住宅ローン審査

仲介会社(又は建築会社)に土地・建物・諸経費の予定合計額を算出してもらい、それをもとに住宅ローンの審査を行います。

※注文建築の場合、せっかくだから妥協したくないということでアップグレードする事や、地盤改良費が予想以上にかかったなど、当初予定していたご予算をオーバーする事が多い為、建物のご予算は100万円~200万円余裕を持っておくことをお勧めします。

(5)土地購入

住宅ローンが内定したら、そのまま土地を購入する場合もありますし、購入を見送って他の土地を探される場合もあります。他の土地を探される場合には土地が決まるまで上記(1)~(4)を繰り返し行います。

※住宅ローン審査が既に内定していれば(4)は土地代+概算見積り+諸経費の資金計算のみ

(6)建築会社選定

土地を購入したら一般的には3社くらい候補の建築会社を選定して、金額・設計・仕様の内容を見比べて最終的に建物を建築してもらう会社を選定します。

(7)設計打合せ

建築会社が決まったら、設計士と打ち合わせを繰り返し、間取り・外観など、建物の設計を煮詰めていきます。設計が固まったらキッチンなどをはじめとする設備機器を選んだり、サッシや断熱材の素材からスイッチ1個、コンセントの位置、床や外壁の色に至るまで、全部を選んだら数千と言われる項目をご自身の好みで決めていき、最終的な詳細見積りを作成します。

この作業が注文建築の醍醐味ですが、好きなものだけを選んでいくととんでもない金額になってしまう事も多く、ご予算内で納めるために「骨を削る」ような思いで取捨選択をしていきます。

(8)建築確認申請用の正式な設計図を確認

設計打合せが完了したら設計士が建築確認申請用の詳細な設計図を作成します。その設計図をもとに、窓の位置やコンセント、照明の位置など、これまで打合せてきた内容と相違ないかの確認を行います。

※信じられないような話ですが、この確認を細かく行わず設計士任せにして最終図面にサインしてしまうと、施工後に自分が指示した窓の位置と違ったとか、設計当時の最終打合せで変更したところが詳細図面に反映されていなかったなどのトラブルが時々見られるので注意が必要です。

この(6)建築会社選定から(8)まで、平均で2か月~3ヵ月。長い方だと半年以上かかる事もあります。

 (9)建築確認申請~建物建築

ここからはほとんど建築会社にお任せになります。確認申請~完成までの期間としては、木造で平均4か月~6か月程度です。着工後でも選択できる項目がある場合には、この間に部材の色などを選ぶ事も有ります。また、完成後に設置するカーテンやエアコン、家電、家具などを選んで準備していくのもこの期間です。

 

おおまかな流れは以上のような感じになります。昔から「家は3軒建てないと満足のいく家にならない」なんて言葉があるくらい、はじめての注文建築は紆余曲折もあり平坦な道のりではありませんが、時間と手間をかけてご自分の住まいを手に入れた気持ちは格別と話される方も多いです。

●注文建築を進めるにはこんな知識が必要

注文建築の場合、土地を探しながら何度か検討物件が出てきた際に、その土地に建築できる間取りプランを作成してもらって、ご自分でも「こういう土地にはだいたいこんな建物(間取りなど)が建築できるんだな」という知識の蓄積が必要です。

また、建築雑誌などで素敵な建物の写真を見て家のイメージを膨らませていたのに、実際に注文建築したら予算の関係で残念な家になってしまったという事もあり得る為「どれくらいの部材を選んで建築するといくら位の予算で建築できる」という見積りのイメージも必要です。

これは何度か検討物件を題材に設計士さんなどと間取り作成+見積りを繰り返しているうちに備わってきます。


この行程を見て「大変そう・・」と思った方は、注文建築されるにはかなりの覚悟を持って臨まれたほうが良いと思います。 「土地を購入して注文建築で家を建てる」というのは、不動産購入のなかでも一番ハードルが高い分、うまくいった時の満足度は非常に高いのですが、建築基準法の基礎知識や建物部材の相場観、建築会社の信頼度など、しっかりとしたリテラシーを身に付けて臨まなければ、残念な結果につながるケースも多いので、良い土地が見つかったからといって飛びつかず、少しずつ知識を蓄積しながら慎重に進めて頂ければと思います。

 

ということで、今回は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?

次回の後編では、「建売」「建築条件付き売地」の特徴についてお話します。

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