老後の切り札?!リバースモーゲージとは

晩婚化が進み、老後も長くなる現代。定年もだんだん60歳から65歳へ変わっていくとされていますが、体力や気力の問題、健康状態などで、そんなに長く働けないと考える方もいらっしゃいますよね。また、マイホームを購入するタイミングが30歳以降で、定年後も住宅ローンが残るという方も多いと思います。

老後の生活が心配だと感じる方に、一つの選択肢として「リバースモーゲージ」という方法があります。ご自分にとってどんなメリットやデメリットがあるのか、早速見ていきましょう。

【コラムニスト】

 ファイナンシャルプランナー 三井明子


●リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージとは、ご自分の死後にマイホームを渡す(担保にする)ことを条件に、銀行からお金を借り、そのままマイホームに住み続けられるという仕組みのローン制度です。ご自身だけでなく、配偶者が亡くなるまでマイホームに住み続けるようにすることもできます。銀行から借りたお金は、死後マイホームを渡す際に返済したことになるので、お子様や親族に迷惑をかけることもありません。マイホーム(持ち家)を相続させる親族がいない、あるいは家を遺しても争いの元になると考えている方にとっては、住みながら最期までマイホームの資産価値を享受できるので、メリットが大きい仕組みであると言えると思います。

リバースモーゲージは色々な銀行で取り扱っていますが、銀行としては、マイホームの将来の資産価値を担保にしてお金を貸すわけなので、対象となる地域が首都圏や主要都市などに限定されている場合がほとんどです。戸建でもマンションでもOKというところが多いですが、長期間資産価値が目減りしにくい土地に建っている戸建の方が、借りられる金額は多くなる傾向があります。マンションは築年数や1戸あたりの土地の所有区分など総合的に判断して融資可能金額が決まります。

●リバースモーゲージのしくみ

リバースモーゲージを利用できる方は、銀行によって50歳以上とか55歳以上など年齢の制限があります。また、下図のように借りたお金の利息だけを払い続けるタイプと、利息も払う必要が無いタイプがあります。

利息を払う必要が無いタイプもあるなら、そっちがいいと思われる方もいると思いますが、借入可能な金額がその分減るので、例えばマイホームに対する銀行の融資担保評価額が5,000万円でも、3600万円くらいしか借りられないといったことになります。また、利息分も払う必要が無いタイプを利用できるのは70歳以上に限定されていたりなど、銀行も赤字となるリスクを抑えるよう考えられています。

ただ、自宅の所有権が移るわけではないので、やっぱりやめたいと途中で思った時は、ご自身で借りたお金を返済することで、契約を解除することができます。また、ご自分の死後、ご遺族がこのマイホームを不動産のまま取得したいと思った時は、代わりに借入金の返済をすることで、相続することもできます。

●リバースモーゲージのメリットとデメリット

「リバースモーゲージは結局お得なんですか?」と聞かれると、ご自身が何歳まで生きられるか、不動産相場がどう変動するのかで変わるので、分かりませんと答えるしかないのですが、損得という観点とは別に下記のようなメリット・デメリットはあると思います。

<メリット>

・老後にまとまった資金を得たり、毎月お金を受け取って生活費にできる。

・住宅ローンが残っていた場合、月々の支払をかなり少なくできるので収支が改善。

・不動産相場が下がっても、マイホームを死後に渡せば借り入れた金額は返さなくてよい。

(不動産相場が上がった場合は、借入額との差分を遺族へ遺せる。)

・住み替えぜずに、マイホームの資産価値を利用できる。

<デメリット>

・子どもや親族にマイホームを遺すことができない。

・利息を支払うタイプの場合、金利が上昇すると負担が大きくなる可能性がある。

・利息を支払うタイプの場合、長生きすればするほど総負担額は大きくなる。

・銀行の赤字リスクを抑え、利益を確保する前提で担保評価金額や金利が設定されるので、その内容に不満に感じる可能性がある。


マイホームを誰かに遺す必要が無い場合は、リバースモーゲージを利用した方が、生きている間に不動産の資産価値を使うことができるのでメリットは大きいのかなと思います。また、老後になって、住宅ローンの支払いが厳しいからと、住み慣れた家を売却して賃貸や、郊外などに移り住むのは想像以上にストレスがかかる場合があります

リバースモーゲージは住宅ローンが残っていても、借り換えという形であたらにローンを組みなおし、マイホームを担保にすることで、利息分のみの支払となるので、年金生活でも収支が黒字になるようなら家計破綻を免れ、精神的にも安定して老後を過ごすことができます。

●リバースバックという方法もあります

また、何となく自宅を担保にお金を借りるということに抵抗がある方や、銀行が提示してきた条件に納得がいかない、不動産相場が今は上がっていると思うので今の価格で評価して欲しいといった方にはリバースバックという方法もあります。

リバースバックというのは、自宅を売却して代金を一括で受取り、その後賃貸契約を結んで自宅に住み続けるという方法です。所有権が他人に移っているので、ずっと住み続けられるかどうかは賃貸借契約次第となりますし、買い戻せる保障もありません。まとまったお金が欲しい、今が売り時と考えている、ずっと自宅に住むわけではなく数年したら介護施設に入りたいなどと考えている場合などにはお勧めの方法かもしれません。(リバースモーゲージでも、最初にある程度まとまった融資を受けられることはありますが、特に利払い無しのタイプを選ぶと、最初に受けられる融資額が低く抑えられることがあります。)


老後に住宅ローンの負担を抑えたい、住宅ローンは終わっているけどマイホームの資産価値を担保に生活にゆとりを持たせたいなどといった場合には、リバースモーゲージやリバースバックという方法を検討してみると良いと思います。利用される前には、それぞれのパターンで、複数の銀行に相談・比較したうえで、ご自身にとって最適な方法を選ぶようにしてください。

また、これからマイホームの取得を考えている方は、将来こういった選択肢を残すためにも、マイホームの「長期的な資産価値」も考慮のうえ、総合的に判断して購入を検討いただければと思います。


ということで、今回は以上となりますが、いかがでしょうか?

セカンドライフのシミュレーションはもちろんのこと、後悔しないマイホーム選びの中で、ご自身として何を優先すべきかなど、当協会の認定アドバイザーである、ファイナンシャルプランナーや不動産コンサルタントへもぜひご相談ください。

次の講義へ