セカンドライフと住まいの関係を考える
セカンドライフとは、定年退職を迎えてからの生活という事になりますが、人生100年時代とまで言われる今の時代、就職してから退職するまでの期間に近い年月を過ごしていく、まさに文字通り「第二の人生」の始まりでもあります。
そのセカンドライフをどのように彩りあるものにしていくのか?を考えるとき、「住まい」と「お金」は切っても切り離せない大事な要素になります。このコラムではセカンドライフの「住まい」に焦点を当てて、今の時点で「どんな事に注意しておけば良いのか?」皆さんに共通する主な内容をお話していきたいと思います。
【コラムニスト】
不動産コンサルタント 黒田健一
●セカンドライフの過ごし方は人それぞれ
私自身これまで、セカンドライフを見据えてのお住み替えにも数多く携わらせて頂きましたが、皆さんそれぞれの背景が違う為、時間をかけてじっくりと考えなければならない方がほとんどでした。
主に皆さんが気にされる項目は以下のようなものになります。
・親御さんとの同居をどうするか?
・自分が歳をとってもこの家に住み続けられるのか?
・海外や田舎暮らしに憧れていたけれど実際に行動を起こすのは勇気がいる
・お子さんが独立やご結婚される時期など、先の事がわからない
などなど・・
セカンドライフについてのご相談は、やはり圧倒的に50代の方がほとんどなのですが、近年の50代の方々は、就職から数十年、バブル崩壊や平成不況をはじめ、現在ではコロナ禍と、数々の困難な時代を企業戦士として駆け抜けてきた方がとても多く、実際にお話を伺う際にも「セカンドライフについてじっくり考えてみる余裕などなかった」というお話をよく耳にしました。
基本的には退職後、いろいろと模索されたとしても住まいへの思い入れはもちろんの事、選択肢、可能性がたくさんあり、とりあえずはそのまま住み続けるという方が圧倒的に多いので、現時点で実際の問題に直面しているという方でなければ慌てて結論を出す必要は全くありません。
ただ、突然問題に直面するというケースが本当に多いので、この機会に一度考えを整理されてみると良いかもしれません。
●セカンドライフの住まいについて確認したい3つのポイント
まずは私がセカンドライフの住まいについてご相談を受けた際に確認して頂く3つのポイントをご紹介します。
セカンドライフの住まいを考える第一歩としては、一般的に考慮される「今の家に住み続けるメリット・デメリット」を皆さん個人個人に当てはめて考えて頂くところからスタートします。
(1)そのまま住み続けるメリット・デメリットを考える
【一般的なメリット】
・住み慣れた、これまでの思い出が詰まった家で暮らしていく事ができる
・独立した子供がいる家庭では里帰りなどがし易い
・特に何もしなくて良い(他の事に時間を使える)
【一般的なデメリット】
・子供がいる家庭では独立後にスペースを持て余すケースが多い
・収入が減る年代から、家の維持費が増えてくる
・通勤の利便性を重視した住まいの場合、そのメリットが無くなる
(2)10年後、20年後のご自身と住まいの兼ね合いを考える
次に、今現在は特に不都合はないとして、将来歳をとったご自分が住みやすいかを色々と予想してみます。
個人差はありますが・・・
・体の自由も制限されていくなかで家の中での生活導線は対応可能か?
・買い物、病院などの外出に支障がないか?
・住まいの築年数、劣化度合いなどを考慮しても手を加えれば住み続けられる建物か?
(3)災害リスクや資産価値の下落、人口減少のリスクを考える
そして最後は、住み続けるうえでそのエリアのリスクついて確認します。購入当時は認識していなかったリスクであっても近年では現実的に様々な弊害をもたらすケースが増えてきました。特に災害リスクは年々増加しており、人命にもかかわる場合もあるので注意が必要です。また、お住まいのエリアが不動産の二極化によって価値の下落又は無価値になってしまうと、そうなってしまった時点でお住み替えする事が困難になる場合もあります。
・自宅の水害、土砂災害、液状化、揺れやすさなど各種ハザード情報を確認
・過疎化により資産が大幅に下落又は無価値になる可能性はないか?
・過疎化により自治体の維持が困難=ライフライン、ごみ収集など生活インフラが衰退する懸念はないか?
将来のことを正確に予想する事はできませんが、セカンドライフについて考えられるタイミングで上記のような内容をご自分に当てはめて考え、チェックしてみる事で漠然としたイメージを少しずつ具体的に認識する事ができます。今現在、特に問題ない方でもまずはこの状態までご自身の考えを整理しておくことを強くお勧めします。というのも、セカンドライフで実際にお住み替えされたお客様のほとんどは、「ある日突然、実際の問題に直面したから」というケースがとても多いからです。
●突然やってくる「困った!」を具体事例でイメージする
例えば、40代で都心のマンションを購入して住まわれていたAさん(当時56歳)のケースをお話します。
Aさんは自分が退職したら、家は職場の近くである必要がないのでお子さんが独立する頃を目途に、もう少し落ち着いた住環境に引っ越しても良いかなという事で、色々な方向性について相談をお受けしていました。 お会いして2~3ヵ月した頃、地方に住まわれるお母様が突然亡くなられて、足の不自由なお父様を引き取らなければならなったと連絡がありました。
ところがAさんのマンションは2LDKで、高校生の息子さんと3人暮らしだった為、お父様を引き取るスペースが無く、老人ホームへの入居も考えましたが、足以外はとても元気なお父様の事を考えると、どうしてもその提案は出来ないという事で、じっくり考える間もなく自宅マンションに一旦同居して2か月足らずで都心から少し離れた3LDKのマンションにお住み替えをされました。
Aさんは「頭の片隅には両親も歳だからそういう事も考慮しないとなぁ」という思いはあったそうですが、「現実としてこんな事になるなら、それまで時間はたっぷりあったのでもっと色々な方向性を考えたかったな」とお話されていました。
一方で、事前から相続対策も含めてセカンドライフを考えていたBさんは、ひとつの成功例でした。
地方に住むご両親と同居まではしたくないけれど、なるべくスープの冷めない距離に住んで老後もお互い安心して過ごしたいと考えて、ご両親が元気なうちからBさんが住んでいる同じマンション内で売りに出た2人暮らしにちょうど良い2LDKのお部屋を、ご両親が相続の為に残してある預金と「つなぎ融資」で購入し、地方のご実家を売却されて完済しました。
元々Bさんのお部屋は3LDKで家族4人で住んでいましたが、先々主に3つのプランを考えていました。
(1)お子さん独立→必要であれば3LDKで親と同居・2LDKは賃貸
(2)お子さん独立・ご両親が亡くなる→3LDKで広さを持て余すなら2LDKに引っ越し・3LDKは売却か賃貸
(3)お子さん独立・ご両親が亡くなる→3LDKにそのまま住みたいなら2LDKは売却か賃貸
Bさんのケースでは将来的にお子さんが望めばどちらかの部屋に住んでもらっても良いし、賃貸のままにして収入源にしてもらっても良いなど、様々な選択肢を広げておきながら、相続対策と同居(近居)も同時にできた成功例といえます。
ということで、今回はセカンドライフと住まいについてお話してみましたがいかがでしたでしょうか?
セカンドライフに限らずですが、「そのまま住み続ける」「お住み替えされる」「いつがベスト?」などについては様々な可能性があり、考えている時点では「これが正解」というのはありません。私自身もそうでしたが、「両親が亡くなったら・・・」というような事は考えたくもないですし、先々の事を考えると不安や悩みにつながってしまって、どうしても目を背けたり、「その時考えれば良いかな」と後回しにしてしまいがちです。
ただ、少なくとも様々な可能性を想定しておくことで、いざという時により落ち着いて対応できますし、なにより安心してセカンドライフを楽しむことが出来るのではないかと思いますので、この機会に一度お考えになってみてはいかがでしょうか?
ライフプランサポート協会では、住まいのあれこれについて、皆さまご自身が自信を持って判断できる「住まいの自分軸」形成を目的として「個別相談」、「セカンドオピニオンサービス」を実施しております。(1ヵ月10組限定)
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また、お住み替えの資金計画やセカンドライフプラン全般、相続対策などについては、ファイナンシャルプランナーによる個別相談も受け付けておりますので、ぜひご活用ください。
その他、住まいの事についてお聞きになりたい事などございましたら、まずはお気軽に当協会にお気軽にお問合せ頂ければと思います。