住宅ローン控除ー2022年税制改正大綱【NEW】

今回は、先日発表された2022年の税制改正大綱のなかで、大幅に内容が変更される「住宅ローン控除」について現時点で分かっている情報をまとめて解説して行きます。

実際には年明けの国会から審議されて2022年4月から施行されますので「まだ確定ではない」という前提ではありますが、今回の改正では「購入される物件の種別」によって控除の内容が細分化されたという印象なので、この動画をご覧頂いて、ご自身が購入を希望している物件種別では、どういった控除が受けられる予定なのかチェックして頂けたらと思います。

【コラムニスト】

不動産コンサルタント 黒田健一

●住宅ローン控除とは

まずこれまでの住宅ローン控除の仕組みを簡単に解説します。

これまでの住宅ローン控除は、その時期その時期で、控除額や条件を拡大したり、縮小したりを繰り返してきましたが、原則、物件購入から10年間、年末残高の1%が、所得税や住民税から毎年控除されるというものでした。

年末残高には上限が設けられていて、購入した(居住しはじめた)年によって上限が増えたり、段階的に減っていったりしていました。ちなみに年末残高の1%よりもその年の所得税や住民税の納税額が少ない場合には、納税額分までしか戻ってきません。

例えば4,000万円住宅ローンを組んだ場合で、年末残高の上限が3,000万円の年だったとすると、下記のグラフのように控除されます。

年末残高は年々減っていきますが、その年の年末残高が3,000万円を超えていれば、3,000万円の1%で、30万円がその年に納めた所得税(+住民税)から控除されます。このグラフでいうと、10年目は年末残高が2,940万円なので、29万円(千円単位以下は切り捨てになります)が控除されるというかたちになり、10年間で299万円が控除されたという事になります。

●住宅ローンの改正について

そもそも住宅ローン控除はマイホーム購入を促進する目的で、住宅ローンで支払う金利負担を軽減するために40年以上前からスタートした制度です。ところが近年の住宅ローンは超低金利なので、例えば借入金利は0.4%なのに1%を控除すると、金利負担以上に控除を受けることが出来てしまう「逆ざや」の状態が問題視されて、今回の改正に至ったというわけです。

では実際に、現時点でどのような内容になりそうか、今年の税制改革大綱から物件の種別ごとに控除の内容を解説して行きます。


<新築マンション・新築戸建の場合>

・年末残高の上限3,000万円

・控除額はその年の年末残高の0.7%

・控除期間は13年

最大控除額を計算すると、3,000万円×0.7%=年額210,000円×13年間で2,730,000円となります。

なお、適用される住宅の床面積は50㎡以上の住宅となりますが、物件が新築の場合、年収1000万円以下の方に限り、床面積40㎡以上の住宅でも住宅ローン控除を受けることができます。


更に、同じ新築でも「環境に配慮した住宅」に対しては、より控除額を多くする措置がとられるようです。

それぞれの住宅の詳しい解説はここでは割愛しますが、控除の内容をご説明します。


【認定住宅】※長期優良住宅や低炭素住宅など

・年末残高の上限5,000万円

・控除額はその年の年末残高の0.7%

・控除期間は13年

最大控除額を計算すると、5,000万円×0.7%=年額350,000円×13年間で4,550,000円となります。


【ZEH水準省エネ住宅】※高断熱かつ自宅で電気を作って実質のエネルギー収支ゼロを目標とした仕様の住宅

・年末残高の上限4,500万円

・控除額はその年の年末残高の0.7%

・控除期間は13年

最大控除額を計算すると、4,500万円×0.7%=年額315,000円×13年間で4,095,000円となります。


【省エネ基準適合住宅】※一定の省エネ水準を満たした省エネ基準適合住宅

・年末残高の上限4,000万円

・控除額はその年の年末残高の0.7%

・控除期間は13年

最大控除額を計算すると、4,000万円×0.7%=年額280,000円×13年間で3,640,000円となります。


ということで、同じ新築でも「その住宅が備えている性能」によって控除額が違ってきますので、今後物件の概要を見る際にはその新築がどういった性能の住宅なのかについてもしっかりと確認したほうがよさそうです。


<中古マンション・中古戸建の場合>

・年末残高の上限2,000万円

・控除額はその年の年末残高の0.7%

・控除期間は10年

最大控除額を計算すると、2,000万円×0.7%=年額140,000円×10年間で1,400,000円となります。

なお、適用される住宅の床面積は50㎡以上となり、今のところ新築のように床面積を緩和する特例は無いようです。


但し、中古でも、先ほど新築でご説明した「認定住宅」「ZEH住宅」「省エネ住宅」の場合には、一律で一般の中古住宅よりも控除額が多くなります。

・年末残高の上限3,000万円

・控除額はその年の年末残高の0.7%

・控除期間は10年

最大控除額を計算すると、3,000万円×0.7%=年額210,000円×10年間で2,100,000円となります。

●住宅ローン控除に適合する物件か判断するうえでの注意点

<床面積の判定基準>

新築でも中古でも床面積が規定の広さ以上の住宅か判断する際には「登記簿の床面積」が適用されます。

特にマンションは販売資料では壁の芯から測った面積を専有面積として表示していることがほとんどですが、登記簿の面積は壁の内側の面積で表示するので、専有面積では50㎡を超えていても、登記簿面積は40㎡台という事がありますので、必ず「登記簿の床面積」を確認して頂けたらと思います。

 

<新耐震基準に適合している住宅が対象になる>

 これまで木造住宅は築20年以内、鉄骨や鉄筋コンクリート造の住宅は25年以内という要件がありましたが、これが廃止されるようです。その代わりに、新しい改正点として「新耐震基準に適合している住宅」という要件が追加されました。

ここでは細かいご説明は割愛しますが、本来は昭和56年6月1日以降に建築確認を受けた住宅が新耐震基準に適合していることになりますが、住宅ローン控除の対象になるかどうかは、「登記簿上の建築年月日が昭和57年1月1日以降」であれば新耐震基準に適合しているとみなすという事になりそうです。(おそらく控除を受ける手続きの簡略化を考えての措置だと思われます。)

また、これまでは旧耐震の住宅でも「耐震基準適合証明のある住宅」や、「瑕疵保険に加入している住宅」であれば住宅ローン控除の対象物件になっていたのですが、この点については記載がないので、今後どのような扱いになるかは注視していく必要がありそうです。

●まとめ

最後に2022年の住宅ローン控除の今の時点での内容を表にまとめました。

 新築と中古で控除の内容が大きく分かれるという事と、新築の中でも住宅の性能によって控除額が細かく分かれるという事になりそうですね。それから、住宅ローン控除を受けられる年収制限が3,000万円から2,000万円に引き下げになることになりそうです。 今回は2022年度の内容のみをご紹介しましたが、2024年以降は年末残高の上限や控除の年数を段階的に減らしていくことも予定されています。

最初にお話した通り、この内容が確定するのは2022年の3月末頃となりますので、修正される部分があるかもしれないですし、一部どういった扱いになるか明確にわからない部分もありますので、新たにわかったことがあれば、またお知らせしますが、これまでの傾向から考えて、そこまで大幅な変更はないと思われます。

物件を選定する際にはどの内容が適用されるのかによって最大300万円以上の差が出てきますので、住宅ローン控除の適用条件も加味して検討して頂けたらと思います。

今年の不動産市況は、まだどのようになっていくかわかりませんが不動産にまつわるトピックがありましたら随時発信していこうと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

そして皆様にとりまして2022年が良い年になりますよう、心よりお祈りしております。

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